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2006-11-12 Sun 00:16
ベドウイの艦上では奇妙な動きがみられた。
すぐ呼笛が鳴り、チユーダーコフ兵曹の声が聞えた。 「砲の覆いをとるな」 幕僚たちも艦橋から甲板に降りてきた。 水雷参謀のレオンチェフ大尉が、砲側へ駆け寄ってきた。 「一発も打っちゃあいかん。提督の生命を救うんだということはお前たちも、分かっているはずだ」 「日本人たちは、俺たちを犬ころのように沈めようとしていますぜ。一体どうすればいいんで?」 砲員たちは激昂していた。 「奴らはそんなことはしない。本艦は病院船なのだ」 頭に包帯を巻いたフィリポフスキー少佐が、猫なで声で兵員たちを宥めた。 太った鼻の上に掛けられた鼻眼鏡には汗の玉が光っていた。 説得の場には、クロング参謀長も参加してきた。 「駆逐艦なんて大したものではない。新しいものを作ればよい。それよりも、提督はロシアにとってかけがえのない人物なのだ」 黒いもじゃもじゃの眉毛の下で、これも黒い小さな目が瞬いた。 この時、ふと気づいたように、クロング大佐は、提督に報告することをレオンチェフ大尉に命じた。 大尉は艦内に駆け込んだと思うと、すぐに速足で戻ってきた。 「提督は同意されました。」 見る間に、前檣に白旗と大檣に赤十字旗がはためいた。 信号兵たちが、二枚の旗をマストの動索に結び付けて待ち構えていたのだ。 白旗はテーブルクロスで代用された。 赤十字旗の下には万国信号旗も付けられていた。 「Had seriously wounded」 我に重傷者あり、の意である。 漣は最初それに気づかず、約三千メートルの位置から砲撃を開始した。 From Abiko Business Consultants スポンサーサイト
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